自分とワープロ

今まで何度も購入するかどうか逡巡しては結局買わなかったポメラを最近購入した。
(DM100)

ずっと購入を検討するも結局買わなかった理由は、
もうすでに持ち運びしやすいノートパソコン(MacBookAir)を
持っていたからだった。
なぜかまだなんとか漫画家っぽい生活をしているわたくし、
お話のあらすじ(俗に言うネーム作業)をダダダダッとまず
文章で作成することが多い。
マンガでも歌詞でもなんでも、とっかかりとしてテキストを
キーボードで打ち込むことが多い自分なので、
それすなわちワープロに触れる機会が増えれば増えるほど
作品数に直結するのではという安易な考えに至ったのでした。

だからテキストが打ち込める道具をいつでも
持ち運べる状態にしておけたらいいよね〜と思っていたのだけれど、
MacBookAirは比較的軽量だし優秀なパソコンではあるが
それでも1キロを越えている。

なんだそのくらい、と思われるかもしれないが、
最近のデスクワーク生活習慣で慢性的な肩こりになっているわたくし、
ちょっと荷物を背負っているだけで午後には肩の痛みが
ドラクエステータスでいうと毒状態くらいに深刻になり
数歩あるくごとにHPがどんどん減っていく貧弱な体になってしまいました。
数年前までは工場で重い鉄のワイヤーを引っ張ったりしていたのが
嘘のようですね。

よってなおさら、ポメラの軽さと取り回しの良さは魅力だったのであった。
軽い! 399g! サッと持てる。パカッと開いて2秒で機動するのもいい。
プラスチックで、冬に異様に冷たくならないのもいい。
乾電池2本で動くのも手軽でいい。
テキストしか打ち込むことができないので
文章作成に集中せざるを得なくなるのもとてもいい。
ついブラウザを開いたりツイッターを覗いたり、ということがない、というかできない。

そう、その「テキストしか打ち込むことができない」というところが特に、
今の自分にはとても良かった。
ポメラを使っていると昔を思い出すのであった。
ワープロを使っていたあのころ。
パソコンではなく、ワープロ


思えば、むかし自分の家に初めてやってきたのはパソコンではなく、
プリンタ一体化型のワープロであった。
父が会社で使う用に購入したものだったが、自分も自由に触らせてもらえた。
なんならむしろ使い方を覚えて、会社書類の清書をお願いしたいみたいな感じだった。
憧れていたキーボードをカタカタッターン! ができるぞ〜と、
わくわくしつつ取り留めのない文章をたどたどしくも打ちはじめてみる。
自分の考えた文章が、活字になって表示されていくのは新鮮だった。

少したって、高校生になり文芸部に入った。
そのころはもうギターを始めていたのだけれど、
軽音楽部なんてものは田舎の高校には存在しなかった。
そこで、文芸部で詩を書いていたら自分の曲の歌詞として
使えるのもできるかもしれないし、
それに短編小説みたいなのも書けたなら楽しいかもしれないなあと、
ごく軽い気持ちで入部した。

文芸部の活動はゆるゆるで、
定期的に文芸誌をザラ紙で作り(思えばコピー本ですねこれ)、
部室の前に置いて無料で配布する。
しばらく後に部室で寸評会を開き、顧問の先生も交えて各自作品の感想を言い合う。
文芸誌を作る時期だけ少しだけ忙しいという部だった。
〆切前は、家のワープロの前でよくうなっていたものだった。

とりあえず何かしら書いてみる。良い言い回しが全然思いつかない。
語彙力の無さに打ちひしがれる。書いては消して書いては消して、
根負けしたかのように残っている文が時折だけど偶然、
なんだかおもしろいと思えるようなものだったりして、一喜一憂していた。

そんな才能のない文芸部員だった当時、携帯電話は持っていなかったし、
インターネットなんてものもなかった。田舎の、静かな夜。
ワープロと向き合って自分の中からでた文章を自分で読んで
自分で判断し削り・足し、編集する。

誰にも邪魔されずに、ワープロのディスプレイに表示される活字で、
自分自身とマンツーマンで濃密に対話していた時間だった。今思えば。


そんなことをポメラで文字だけを打っていたら思い出したのだった。
「自分だけ」と活字で対話するような作業。
パソコンのインターネット上で文章を書く時は(SNSとか)、
往々にして誰かの意見を浴びてそれに呼応するように
即時的な文章を書きがちなんだけれど、
ネットをすることができないこのポメラDM100を使っていると、
当時のワープロで自分の中にだけ深く潜り込んでいくあの感じが何だか蘇る。
ふと油断すると、「ネットのほかのみんなたちはこう思っています」
「ネットではこんなことが今話題です」なんてことがなにひとつ目に入ってこない。

起動したらただそこにあるのは無味乾燥な白い画面。
自分が考えて、打ち込んだ文章だけがそこにある。
空想した物語を綴ってもいいし、思うことを文字にして整理してもいいし。
自由だ。自分だけが自由に使っていい自由だ。
なんだかいいなと思う。ひさしぶりだなこの感じ、と思う。

最近こんな気持ちになることがあまりなくてそれを思い出せて嬉しくって、
ちょっとだけ外に行くときでもポメラを鞄に忍ばせている日々です。
買って良かった。ほんとに買って良かった。
めっちゃ安いって訳じゃないけど。迷っている人は買ってみよう。

…と、散々ポメラを買った感想とか買った理由とかをまくし立ててみましたけど、
真の買ってしまった理由としてましては普段ワープロ用に使っていたMacBookAirに
このあいだ盛大にビールをぶっかけてしまい、
たまに反応しなくなるキーができてしまったから、保険として購入したのでした。
タッチ音もニチニチいうようになって悲しい。

なんだったんだこれまでの文章。台無しだ!!!

あと今更になって「ワープロでなくメモ帳とペンでええですやん」
という野暮なツッコミはなしでお願い致しますゼ!

そんなわけでポメラと戯れていたら長い上に
どうということはない文章が書けたわけだけれども、
なんだかこんな風に文章なんて久しく書いていなかったせいもあって読みにくいし、
相変わらず未熟なままだ。
でもまあ折角なんで今後も気軽に文を書いて残して、後日に指さして笑いたい。

なので、
(気軽に長めの文章を書けたらなってことで作ったのに放置していた)このブログに、
投稿してみました。ポメラは打ち込んだテキストを工夫すればwifi
Evernoteにすぐ投稿もできるんですよ奥さん!
そっからコピペして手直しすればブログにすぐ投稿できるんやで奥さん!
奥さん! ジョイ君やで! 奥さんとジョイ君の官能的な小説も書き放題や!
なんの話だ。
いや、ほんとにいいですよポメラ。ネットに疲れ気味な人には特にいいかも。
MacBookAirだとついブラウザ開いて文章書くのに集中できないって人(僕だ)に
特にオススメだ!

というか、自分は「ワープロ」そのものが好きだったのかなと、
ポメラ触ってて思いました。
タイピングさえ早ければ脳内をスムーズに文字として簡単に出力できる、
ただそれだけのマシンが。
昔使っていたのはデカくて重くて大変だったが、今やカバンに入るんだもんね。
すごい時代だな〜。充分なくらいに未来だ〜。
盛大にビールぶっかけないように気をつけよう。